Chain~この想いは誰かに繋がっている~
来た、来た。

絶対に言うよ~、あのセリフを。

「真ん中の列の中央の席を。」

言った~!!

「はい、中央の席ですね。」

慣れた手つきで、中央の座席を取る。


「こちらがチケットです。」

すっと出された手の平に、わざとチケットを介して、自分の手を置く。

えっ?って言う感じで、顔を上げる相手。


『どうしたの?今日はやけに積極的だね。』

『だって、久しぶりにあなたに会えたんだもの。』

そして私は、じーっと相手の目を見つめる。


「…梨子、映梨子!!」

「ん?」

同僚の美希に呼ばれて、我に帰る。

「何やってんのよ!!」

スッと、私の手が相手の手から離れる。

「お客様、申し訳ございません。」

「いや、いいよ。」

そう言って、あの人は何事もなかったかのように、カウンターから離れて行ってしまった。
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