Scarly Rules
焼かれた火の子
(ゴーン…ゴーン…)
由佳子の寝室。
壁に立てかけた大きな時計は
音を立てて時間を告げる。
21時。
主人と奴隷は沈黙のまま。
(コンコンッ)
扉を叩くノック音。
(ガチャ)
「失礼致します。」
執事の鞘守が恭しく頭を垂れる。
「…なんの用だ。」
この家の主人たる恭平が
低く唸るような声を出す。
「夜分ではございますが、今夜はお二人ともご夕食の席にいらっしゃらなかったとのこと。メイド達が心配をしておりましたゆえ せめてお夜食でもと…これをお持ち致しましてございます。」
(カタッ…)
鞘守は、持ってきた盆を 入り口脇のテーブルに置くと そのままお辞儀をし 静かに部屋から出て行った。
「…食うか?さすがに腹減ったろ?」
恭平が 何もなかったかのように椅子に腰掛け ゆかを手招きするけれど。
「いえ。私は…」
そのまま会話は再び途切れて。
(ピロリロリーン♪)
恭平のスマホに着信。
「…もしもし。あ?なんで?…な。…っ。あぁ。けど…うん。分かった。…でもそれ明日で良いだろ?…おぅ。…じゃあ。」
(ピッ。)
「…何の電話?」
「…とりあえず今日は寝ろ。明日お前もちょっと出かけるぞ。」
私の質問には答えず
ご主人様はそれだけ言って
食べかけのスコーンを頬張り去っていった。
「お出かけか。」
って、
えぇぇー⁉︎⁉︎⁉︎Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
何年ぶりよ。そんなの。
自分で呟いた瞬間に
恭平から聞かされたマサさんの複雑な云々の話は頭から綺麗に吹き飛んで。
「う…え?…ほんとに?明日お出かけ?うそ。私家から出れんの?うわーうわうわうわー」
ついバカみたいに大きな独り言を叫んでしまったせいで。
(ガチャ…)
「由佳子様?どうか…なさいましたか?」
夜食の撤収をすべく戻ってきた鞘守さんに心配されてしまったほどだ。