Scarly Rules
来訪者
夕暮れのリビング。
開け放たれた窓からは
くすぐるような春風が舞い込む。
「いやさ、俺ん家も一応近所じゃん?今日なんとなく散歩してたらお前等の声がしたから 居るんだと思って。お邪魔しちゃえー!みたいなノリ。駄目…だったか?」
純也…お前、そんなに軽いノリの奴じゃないよな普段。
どうした?
「ノリって…」
ここでマサが口を挟んだ。
「純くん普段ノリで動いたりしない派なのに。」
「お!マサも居たんだよな。そかそか。お前恭平ん家たまに来るっつってたもんな。羨ましいねぇー。俺なんか一度もお呼ばれしたことなかったんだぞ?」
どうにも話が噛み合わないが
「で?そちらの愛らしい女性は?どなたかな?」
純也の興味がゆかに向かったもんだから
俺とマサは途端に慌てる羽目になる。
「え、えっと…」
困ったように俯くゆかは可愛いが
「ゆか、黙っとけ。」
無闇に喋らせるわけにはいかない。
俺とゆかとは婚約関係にある…
マサと屋敷の人間以外にはそう説明することになっているのだが
テンパったゆかにそれが出来るとは到底思えないからだ。
口をつぐんだゆかに変わって
俺が純也に紹介をする。
「前に言ってた、俺の奥さんだよ。会わせたことはなかったけど、話はしてたろ?」