to.you
いつの間にか僕の眼鏡はくもっていた。

でも、レンズを何度もふいても、視界が明るくなることはない。
しまいには、まるでわさびを食べた時のようなツーンとしたものが鼻につく始末だ。



もうすでに、山田さんの顔もぼんやりとしか見えなくなっていた。


『頑張ってね。学級委員、今年もやるでしょ?』


頬から流れる涙を、ふいてから山田さんが口を開いた。

『うん。山田さんも、東京で頑張ってね。僕も学級委員。やるからさ』

東京と言う県名を口にだしただけで、なんだか少し自分が大人になったように感じる僕は、まだまだ田舎もので、相当なガキだと思う。

山田さんはクスッと笑ってみせてから、

『東京でも学級委員か。頑張ってみよーかな、それとさ、翔くんにもよろしくって、言っといてよ』

と、少し上から言うようなものいいで、僕に言った。
僕は、『うん、言っとくよ』と頷き、笑った。



『そろそろ時間よー』

その時、たくさんの大きなキャリーバックを持った山田さんのお母さんが新幹線にのりこんだ。
『はーい』と返事をしてから、山田さんも自分のキャリーバックを手に持つ。
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