to.you
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『あっちまで』
ふいに口から出た言葉。
僕は山田さんの一回り小さいキャリーバックをひょいと片手で持ち上げた。
『ありがとう』
ニコッと笑う彼女を見て、なぜか胸が切なくなる。
視界がぼやける中、新幹線の入り口の前で僕は、キャリーバックを山田さんに手渡して、一歩後ろに下がった。
山田さんの細い手が僕の頬に触れる。
黒ぶちの僕の眼鏡がゆっくりと山田さんの手によってはずされた。
思わず目をつぶる…───
優しくて、細い指さきがぼくの目の廻りをゆっくりとこすった。
さっきまで、ぼやけて見えなかった山田さんの顔がはっきりと見える。