Be yourself!
慌てて背筋を伸ばす私。
階段の上から声をかけてきたのは、社内の音楽プロデューサーである奥田さん。
ちなみに彼女は四十代前半。今まで何枚ものヒット曲を叩きだした敏腕プロデューサーだ。
(ちなみにプロデューサーというのは、楽曲を作る際の総責任者。どういった層に売るのか、曲に関わる人々の選定、また発売後のメディア戦略、プロモーションの指揮などを取る人のこと)
そしてその隣には、もう一人――
白っぽい金髪の男の人が立っていた。
誰だろう……。
年のころは私より少し上に見える。
両耳にびっしりとルーズリーフのような輪っかのピアス。
細いレザーパンツとゴツめのブーツ、ラフなジャケット姿の彼は、まるでチェシャ猫のような大きく印象的な目で私を見つめてくる。
その瞳は本当にまっすぐで……むしろ少しぶしつけなくらいで。
どこかで見たことがあるような気がする。
もしかして奥田さんが担当しているアーティストなんだろうか。