Be yourself!
そして彼は、嬉々としてわたあめの袋に顔を突っ込んだマリカちゃんを両手でぎゅーっと抱きしめると、そこでようやく私の存在に気付いたように顔を上げた。
私に向けられる静かな眼差しに、なぜか心臓が跳ねあがる。
「あっ、えっと、御子柴さんに言われて一柳さんを探してました。で、そこで、」
「マリカを保護してくれてありがとう。目を離した僕が悪いんだけど、本当に助かったよ」
しどろもどろになる私に向かって、一柳要はさらりとそう言うと、手首にはめている腕時計に目を落とした。
少し長めの黒髪がさらりと揺れて、切れ長の目を覆い隠す。
物静かで端正な雰囲気だけど、それだけじゃない、その心に炎のような激しさを持つといわれる一柳要。
【赤と黒の蜘蛛】は表に出る御子柴律が何かと注目されがちだけど、なんていうか、とにかく不思議な雰囲気がある人だなぁ。