Be yourself!
赤と黒の蜘蛛
大人の事情
デイジーレコードに超特急で向かった私。
(『helix』とデイジーレコードはそう離れてはいない)
「なんだ、その格好……」
片手にはコンビニの袋。七分丈のボーダーカットソーにデニム。スニーカーといういでたちの私を見て、
一階のエントランスで出迎えに立っていた池中が、眉をぎゅっと寄せてため息をついた。
「だ、だって、仕方ないでしょ、今すぐ来いなんて言うから!」
ごもっともな指摘をうけ一瞬赤面する。さすがの私も、この格好で社内に入るのは抵抗があったけれど仕方ない。
こういうもんですと開き直って、池中と一緒にデイジーレコード内に足を踏み入れた。
「ねえ、私いったいどうして呼ばれたわけ?」
「お前も一応メンバーだから」
「え? なんの?」
「まあ、いいから」
相変わらず詳しく説明する気がなさそうな池中はさっさとエレベーターに乗った。
降りた先は会議室や打ち合わせ室が並ぶフロアー。
それから池中はスタスタと先を歩くので、私もとりあえず彼の斜め後ろを歩き、そしてドアが開け放たれている会議室へと足を踏み入れた。