惚れられても応えられねーんだよ
やっぱり、弱っている時が一番落されやすい
♦
ボーーーーボーーーー。
身体を震わせるような低い大きな音で目が覚めた。
目の前には高さ2メートルはある積荷用のコンテナがたくさん並び、音が船の汽笛であり、ここが積荷を船に乗せる港だということがなんとなく理解できる。
が、今までショッピングモールにいたはずである。
寝ぼけているにしても、こんな湊で座り込んでいるのはおかしい。
私はとりあえず立ち上がり、自分が自分であることを確認する。大丈夫。場所が変わっただけで、特に何も乱れていない。
「チッ」
男性の舌うちのような音が聞こえ、咄嗟に身をコンテナに寄せて顰めた。
声の方を見ると数メートル先で、黒いスーツの首元を乱した男性が口にタバコを加えて渋い顔をし、背をコンテナに預けたままよろけるように座り込んでいく。
年は30近くか、黒い髪の毛が無造作に揺れている。
切れ長の目に整った顔立ちがクールな印象を持たせるが、よく見ると額は血だらけで、更に顎から下にも滴り落ちている。何があったのか全く分からないが、相当深手を負っているようだ。
男性はどうも手探りでポケットのライターを探しているようである。状況から見て、一戦を交えて傷を負いながらも隠れている間タバコに火をつけようとしたらライターを失くした、という具合だろう。
血だらけになっている事態を見ても、尋常ではないことが近くで起こっている可能性が高い。
私は、少しだけ後ろへ下がろうと足を少しずらした。
「なんですか? 新堂さん、もうやられたんですか?」
どこからともなく、かったるそうなそれでいて挑戦的な若い男性の声が聞こえてきたと思ったと同時に、同じような黒いスーツがスタンッとコンテナの上から降って来る。
軽快な身のこなしは素晴らしいが、突然で驚いた私は思わず、
「ワッ!!!」
と声を上げた。
茶色い髪の毛の若々しい男性と、ケガをした男性の両方に睨まれる。若い男性の方が背が少し低いが、大きな二重の目が幼さを醸し出しているアイドル顔だ。
「あれ? 新堂さん、ストーカーにつけられてますけど」
「あぁ!?」
2人の男性の鋭い視線に絡まれて、身動きがとれなくなる。なんかストーカーと勘違いされた!? というか、ジャニ顔なのに、口悪くない!?
確かに今の私の状況はコンテナの陰からその血まみれの人を見つめている状況だけれども、だからって、ストーカーはないでしょ!
「アンタ、道に迷ったんなら早く帰んな。こんなとこうろついてっと、巻き込まれっぞ」
少し大きめの声で黒髪の男性がこちらに向かって言ってくれたのに対し、若い身軽な方は、
「ストーカーで捕まりたくなかったらライターよこせって言ってますよ、このニコ中が」
と、通訳する。
「ンな事誰も言ってねーだろーが!! ライター欲しいけど!」
ケガをしているにも関わらず随分な突っ込みを披露しながら、じたばたしている。
私はとりあえず、大丈夫そうだと踏んで顔を緩めて足を踏み出した。
「!!!??」
突然、後ろから強い力で首に腕を引っかけられて引っ張られ、息ができなくなる。
「いつまでかくれんぼのつもりだ、コラ?」
ドスの利いた声の主に太い腕でぎゅうぅぅぅと締め付けられ、足が浮いたと同時に手にも力が入らなくなる。
茶髪の男性が拳銃を構えたのが見える。よろよろしながら後ろの男性も立ち上がった。
そこまでで、苦しくて目を開けることができなくなる。
と、同時に急に首元がふわっと緩くなり、そのせいで体勢を崩して前に倒れ込みそうになる。
「おっと」
だいぶ前かがみに倒れ込んでいたが、ギリギリのところで茶髪の男性が腰を抱きかかえてくれた。
しっかり抱き留めてくれたおかげで、よろけずに済む。
だが、まだ首への負担がなくなったわけではなく、自分で立つことができずにされるがままに体重を預けていて気付いた。
私の身体の左肩辺りが血まみれだ。
「キャアアアアァァァァァァ!!」
思い余って、男性にしがみつく。
誰の血!? 私の血!?
「どうしたんですか!? しっかりして下さい!」
血の匂いがする。嗅いだこともないような、強烈なにおいが、自分の首元から漂ってくる。
とにかく、誰かに掴まっていたいと、そのスーツをぎゅうっと握り締めた。
「あれ、俺のストーカーだった?」
違う!!!!
心の中で叫びながらも、震える身体を止めることができず、ただ私はしばらくその胸に収まっていた。
ボーーーーボーーーー。
身体を震わせるような低い大きな音で目が覚めた。
目の前には高さ2メートルはある積荷用のコンテナがたくさん並び、音が船の汽笛であり、ここが積荷を船に乗せる港だということがなんとなく理解できる。
が、今までショッピングモールにいたはずである。
寝ぼけているにしても、こんな湊で座り込んでいるのはおかしい。
私はとりあえず立ち上がり、自分が自分であることを確認する。大丈夫。場所が変わっただけで、特に何も乱れていない。
「チッ」
男性の舌うちのような音が聞こえ、咄嗟に身をコンテナに寄せて顰めた。
声の方を見ると数メートル先で、黒いスーツの首元を乱した男性が口にタバコを加えて渋い顔をし、背をコンテナに預けたままよろけるように座り込んでいく。
年は30近くか、黒い髪の毛が無造作に揺れている。
切れ長の目に整った顔立ちがクールな印象を持たせるが、よく見ると額は血だらけで、更に顎から下にも滴り落ちている。何があったのか全く分からないが、相当深手を負っているようだ。
男性はどうも手探りでポケットのライターを探しているようである。状況から見て、一戦を交えて傷を負いながらも隠れている間タバコに火をつけようとしたらライターを失くした、という具合だろう。
血だらけになっている事態を見ても、尋常ではないことが近くで起こっている可能性が高い。
私は、少しだけ後ろへ下がろうと足を少しずらした。
「なんですか? 新堂さん、もうやられたんですか?」
どこからともなく、かったるそうなそれでいて挑戦的な若い男性の声が聞こえてきたと思ったと同時に、同じような黒いスーツがスタンッとコンテナの上から降って来る。
軽快な身のこなしは素晴らしいが、突然で驚いた私は思わず、
「ワッ!!!」
と声を上げた。
茶色い髪の毛の若々しい男性と、ケガをした男性の両方に睨まれる。若い男性の方が背が少し低いが、大きな二重の目が幼さを醸し出しているアイドル顔だ。
「あれ? 新堂さん、ストーカーにつけられてますけど」
「あぁ!?」
2人の男性の鋭い視線に絡まれて、身動きがとれなくなる。なんかストーカーと勘違いされた!? というか、ジャニ顔なのに、口悪くない!?
確かに今の私の状況はコンテナの陰からその血まみれの人を見つめている状況だけれども、だからって、ストーカーはないでしょ!
「アンタ、道に迷ったんなら早く帰んな。こんなとこうろついてっと、巻き込まれっぞ」
少し大きめの声で黒髪の男性がこちらに向かって言ってくれたのに対し、若い身軽な方は、
「ストーカーで捕まりたくなかったらライターよこせって言ってますよ、このニコ中が」
と、通訳する。
「ンな事誰も言ってねーだろーが!! ライター欲しいけど!」
ケガをしているにも関わらず随分な突っ込みを披露しながら、じたばたしている。
私はとりあえず、大丈夫そうだと踏んで顔を緩めて足を踏み出した。
「!!!??」
突然、後ろから強い力で首に腕を引っかけられて引っ張られ、息ができなくなる。
「いつまでかくれんぼのつもりだ、コラ?」
ドスの利いた声の主に太い腕でぎゅうぅぅぅと締め付けられ、足が浮いたと同時に手にも力が入らなくなる。
茶髪の男性が拳銃を構えたのが見える。よろよろしながら後ろの男性も立ち上がった。
そこまでで、苦しくて目を開けることができなくなる。
と、同時に急に首元がふわっと緩くなり、そのせいで体勢を崩して前に倒れ込みそうになる。
「おっと」
だいぶ前かがみに倒れ込んでいたが、ギリギリのところで茶髪の男性が腰を抱きかかえてくれた。
しっかり抱き留めてくれたおかげで、よろけずに済む。
だが、まだ首への負担がなくなったわけではなく、自分で立つことができずにされるがままに体重を預けていて気付いた。
私の身体の左肩辺りが血まみれだ。
「キャアアアアァァァァァァ!!」
思い余って、男性にしがみつく。
誰の血!? 私の血!?
「どうしたんですか!? しっかりして下さい!」
血の匂いがする。嗅いだこともないような、強烈なにおいが、自分の首元から漂ってくる。
とにかく、誰かに掴まっていたいと、そのスーツをぎゅうっと握り締めた。
「あれ、俺のストーカーだった?」
違う!!!!
心の中で叫びながらも、震える身体を止めることができず、ただ私はしばらくその胸に収まっていた。