惚れられても応えられねーんだよ
あからさまに嫉妬されたい
♦
奴を殺りたい……その一心で竹刀を振ったのに……。
怒りで我を忘れて、逆にやられた。
岬は寮の敷地内にある道場で1人仰向けになって大の字で倒れ、ぼんやり天井を眺めていた。
雪乃を秘書にするって事は、結局自分の女みたいに囲いたいだけじゃねーか。堂々と言うのが怖くて、こそこそうまく仕事与えて自分の思い通りにしたいだけじゃねーか!!
こっちは振られないように、逃げられないように手ぇ繋いで仕事までさぼったっていうのに……(サボるのはいつものことか)、ムカつく、腹立つ!!
何がお前が好きなら好きにすりゃいい、だ。一日の3分の1も一緒に居るように自分で仕向けといて!! 俺が入る隙失くそうとしやがって!!!
「ここに居たんですか! 探しましたよ」
俺は雪乃の声に慌てて顔を元に戻す。そして、無心で天井を見つめた。
「お金、ありがとうございました。服は和也さんのお姉さんが作ってくださるということで、とりあえずの服は貰いました。それで、ハーゲンダッツだけお土産に買いました。残りのお金は……」
「新堂と一緒にいるための服なんて、なんでもいーだろぅよ」
「えっ……」
雪乃が戸惑っている。分かっているのに、止められない。
「新堂とナニするための、服なんていらねーだろうよ?」
いけねぇ、いけねぇって分かってるのに、やまらない。
「……私、そんな風に仕事するつもり、ありません」
……分かってる……。
「…………、剣道……ですか? この竹刀。……練習してるんですね……」
雪乃は投げ捨ててあった竹刀を手に取り、「ワッ」と声を出す。
俺は慌てて起き上がった。
「重い!! 竹刀ってこんな重かったでしたっけ??」
両手で抱え、不思議そうに眺めている。
「……中に鉄が入ってるんだよ。重り。軽い木で練習するより腕力が鍛えられる」
「でもこれ、すごく重い!! これ、両手でこうやって……こうするんですよね?」
雪乃は、両手で持ち上げ、振り落とす。それだけでもようやく、といった感じだ。
「あ! 朝練ってこれですか?」
「そうですよ。俺は高校のインターハイで優勝してます。新堂にも負けませんよ」
さっきは気分が乗らなかっただけで、普通にやり合えば中島さんにだって劣らない。
「私でも、練習すればできるようになるかな……」
雪乃は一生懸命竹刀を振り上げ、振り下ろす。
「女なのにそんなことしなくても。いざとなりゃ……」
「岬さんが助けてくれたじゃないですか、昨日」
雪乃は俺をじっと見つめてきた。
「私も、いざって時に備えたい。少しでも、役に立ちたい。この竹刀も、今はすごく重いけど、練習すれば振れるようになりますよ、きっと」
言いながらも、すぐに振るのをやめた。予想通り体力はあまりない。
「んじゃ、俺が稽古つけてあげますよ。いきなりその竹刀じゃ何もできませんよ? まずは普通の竹刀で……」
「私も朝練、参加していいですか?」
そんな顔で言われて、断れるわけがねェ。
「俺がサボりの日はサボりですよ?」
「私はサボりません」
雪乃はにこやかに笑いながら、髪の毛を揺らす。
あーあ……そんな可愛い笑顔出したら、新堂の野郎がトチ狂うじゃねーか……。
奴を殺りたい……その一心で竹刀を振ったのに……。
怒りで我を忘れて、逆にやられた。
岬は寮の敷地内にある道場で1人仰向けになって大の字で倒れ、ぼんやり天井を眺めていた。
雪乃を秘書にするって事は、結局自分の女みたいに囲いたいだけじゃねーか。堂々と言うのが怖くて、こそこそうまく仕事与えて自分の思い通りにしたいだけじゃねーか!!
こっちは振られないように、逃げられないように手ぇ繋いで仕事までさぼったっていうのに……(サボるのはいつものことか)、ムカつく、腹立つ!!
何がお前が好きなら好きにすりゃいい、だ。一日の3分の1も一緒に居るように自分で仕向けといて!! 俺が入る隙失くそうとしやがって!!!
「ここに居たんですか! 探しましたよ」
俺は雪乃の声に慌てて顔を元に戻す。そして、無心で天井を見つめた。
「お金、ありがとうございました。服は和也さんのお姉さんが作ってくださるということで、とりあえずの服は貰いました。それで、ハーゲンダッツだけお土産に買いました。残りのお金は……」
「新堂と一緒にいるための服なんて、なんでもいーだろぅよ」
「えっ……」
雪乃が戸惑っている。分かっているのに、止められない。
「新堂とナニするための、服なんていらねーだろうよ?」
いけねぇ、いけねぇって分かってるのに、やまらない。
「……私、そんな風に仕事するつもり、ありません」
……分かってる……。
「…………、剣道……ですか? この竹刀。……練習してるんですね……」
雪乃は投げ捨ててあった竹刀を手に取り、「ワッ」と声を出す。
俺は慌てて起き上がった。
「重い!! 竹刀ってこんな重かったでしたっけ??」
両手で抱え、不思議そうに眺めている。
「……中に鉄が入ってるんだよ。重り。軽い木で練習するより腕力が鍛えられる」
「でもこれ、すごく重い!! これ、両手でこうやって……こうするんですよね?」
雪乃は、両手で持ち上げ、振り落とす。それだけでもようやく、といった感じだ。
「あ! 朝練ってこれですか?」
「そうですよ。俺は高校のインターハイで優勝してます。新堂にも負けませんよ」
さっきは気分が乗らなかっただけで、普通にやり合えば中島さんにだって劣らない。
「私でも、練習すればできるようになるかな……」
雪乃は一生懸命竹刀を振り上げ、振り下ろす。
「女なのにそんなことしなくても。いざとなりゃ……」
「岬さんが助けてくれたじゃないですか、昨日」
雪乃は俺をじっと見つめてきた。
「私も、いざって時に備えたい。少しでも、役に立ちたい。この竹刀も、今はすごく重いけど、練習すれば振れるようになりますよ、きっと」
言いながらも、すぐに振るのをやめた。予想通り体力はあまりない。
「んじゃ、俺が稽古つけてあげますよ。いきなりその竹刀じゃ何もできませんよ? まずは普通の竹刀で……」
「私も朝練、参加していいですか?」
そんな顔で言われて、断れるわけがねェ。
「俺がサボりの日はサボりですよ?」
「私はサボりません」
雪乃はにこやかに笑いながら、髪の毛を揺らす。
あーあ……そんな可愛い笑顔出したら、新堂の野郎がトチ狂うじゃねーか……。