惚れられても応えられねーんだよ
♦
「何のつもりですか? 新堂さん」
私はその声に気付き、薄く目を開ける。
「あ、おい。ちょっと布団はぐってくれ」
「何のつもりって聞いてんだろーがッ!!!」
怒声に、私は慌てて目を開いて辺りを見回した。電気もついていない、薄暗い自分の部屋。
すぐ側には、どこか遠くを見ている新堂の顔。
そしてこの体勢はお姫様抱っこ。
あれ、今まで私、どうしてたんだっけ?
「人の女抱きかかえて、部屋まで入って、何してんだって聞いてんだよッ!!!」
岬は、入口のドアからどすどすと近寄ってくる。
私は、わけが分からず、
「あっ、あわっ……」
とりあえず声を上げるが、喉が痛い上に、だるくて言葉にならない。
「中島さんと飲みに行って、酔い潰れたんだ」
新堂に言われてようやく思い出す。あそうだった。それくらい、今は思考がうまく働かない。
「手ぇ離せ」
岬の聞いたこともないような低い声が響く。
「離したら落っこちるだろうが。だから掛け布団はぐれって言ってんだよ」
「離せ」
ものすごい速さで、拳銃が新堂の首の下に回り、喉に当たった。
つまり、私の頭の上でもある。光のない部屋で、その鈍い光は、刃物のようだった。
「わあッ!!!」
私は驚いてバランスを崩し、新堂の手から落ちそうになる。
「あっぶねーだろーがッ!!! テメェの女がいるだろうよ!!! 」
「俺が撃つとしたら、新堂さんだけですよ」
新堂は首の真下に拳銃を受け、舌打ちを打ちながらもゆっくりと私をベッドの布団の上におろす。
「ほら……」
新堂から手が離れた途端、ガシャンと拳銃が床に落ちる音がし、強い力で抱きしめられた。
すぐに新堂は部屋から出て行く。
「えっ、あっ、あのっ!!!」
私は自分の意思とは違う方向に事が進んでいくのが怖くて、新堂を呼び止めた。
だが、彼はこちらを見ようともしない。
「新堂の汚ねぇ手に触れられたことなんか、忘れてください」
「えっ、あの、……」
私は、思い切り身をよじった。だが、離してくれない。
「あのっ、そのっ……」
「…………、雪乃…………」
掠れるような声で名前をたった一度呼ばれただけで、一気に力が抜けた。
「……あの、私…………」
岬の気持ちに、どう応えるべきか分からない。
「あの、私……」
より一層、岬の腕の力が強まっていく。
「言いたいことは、分かってますよ……」
……本当に、伝わっているだろうか?
そう思いながらも、私はその体勢から逃れることができなかった。
さっき、新堂を呼んでも振り向いてはくれなかった。
そう気付いたから岬の腕の中にとどまるわけじゃない。
そうじゃない……。
そうじゃない、と心の中で何度も繰り返しながら、ただ岬の腕の中で力を失くし、されるがままに座り込んでいた。
「何のつもりですか? 新堂さん」
私はその声に気付き、薄く目を開ける。
「あ、おい。ちょっと布団はぐってくれ」
「何のつもりって聞いてんだろーがッ!!!」
怒声に、私は慌てて目を開いて辺りを見回した。電気もついていない、薄暗い自分の部屋。
すぐ側には、どこか遠くを見ている新堂の顔。
そしてこの体勢はお姫様抱っこ。
あれ、今まで私、どうしてたんだっけ?
「人の女抱きかかえて、部屋まで入って、何してんだって聞いてんだよッ!!!」
岬は、入口のドアからどすどすと近寄ってくる。
私は、わけが分からず、
「あっ、あわっ……」
とりあえず声を上げるが、喉が痛い上に、だるくて言葉にならない。
「中島さんと飲みに行って、酔い潰れたんだ」
新堂に言われてようやく思い出す。あそうだった。それくらい、今は思考がうまく働かない。
「手ぇ離せ」
岬の聞いたこともないような低い声が響く。
「離したら落っこちるだろうが。だから掛け布団はぐれって言ってんだよ」
「離せ」
ものすごい速さで、拳銃が新堂の首の下に回り、喉に当たった。
つまり、私の頭の上でもある。光のない部屋で、その鈍い光は、刃物のようだった。
「わあッ!!!」
私は驚いてバランスを崩し、新堂の手から落ちそうになる。
「あっぶねーだろーがッ!!! テメェの女がいるだろうよ!!! 」
「俺が撃つとしたら、新堂さんだけですよ」
新堂は首の真下に拳銃を受け、舌打ちを打ちながらもゆっくりと私をベッドの布団の上におろす。
「ほら……」
新堂から手が離れた途端、ガシャンと拳銃が床に落ちる音がし、強い力で抱きしめられた。
すぐに新堂は部屋から出て行く。
「えっ、あっ、あのっ!!!」
私は自分の意思とは違う方向に事が進んでいくのが怖くて、新堂を呼び止めた。
だが、彼はこちらを見ようともしない。
「新堂の汚ねぇ手に触れられたことなんか、忘れてください」
「えっ、あの、……」
私は、思い切り身をよじった。だが、離してくれない。
「あのっ、そのっ……」
「…………、雪乃…………」
掠れるような声で名前をたった一度呼ばれただけで、一気に力が抜けた。
「……あの、私…………」
岬の気持ちに、どう応えるべきか分からない。
「あの、私……」
より一層、岬の腕の力が強まっていく。
「言いたいことは、分かってますよ……」
……本当に、伝わっているだろうか?
そう思いながらも、私はその体勢から逃れることができなかった。
さっき、新堂を呼んでも振り向いてはくれなかった。
そう気付いたから岬の腕の中にとどまるわけじゃない。
そうじゃない……。
そうじゃない、と心の中で何度も繰り返しながら、ただ岬の腕の中で力を失くし、されるがままに座り込んでいた。