想われたくて…‐姉と私とあの人と‐
気が付くと……


あたしの目からは、涙がこぼれ落ちていた。



「あたしは……もう……あなたの事は……想いませ……ん。」


苦しいよ。


想い続けたいのに……。


想われたいのに……。






「お前……言ってる事、めちゃくちゃ……。」


しばらくの沈黙の後、今度は木下サンが、話し始めた。


「お前は、自分以外の人の事ばかり考えてるよな。」


涙が止まらなくなったあたしの顔を、優しく微笑んで見つめる、木下サン。


「俺、実は今日、別れ話しをするつもりで行ったんだ……。

こないだお前にした事、言った事は……自分でも許せなかった。」


別れ話し……?


「育たない気持ちでも、彼女の存在があるのに……。俺、サイテーな事をしたんだよな。

けど、あの時は、止まらなかった。ブレーキ、壊れちまったんだ。」


あたしは、木下サンとのキスを思い出し、そっと自分の唇に触れた。


「だから、決めたんだ。
お前の気持ちがどうであれ、あいつとは、別れようって……。」


あの時あたしは、何も言えず、逃げちゃったんだよね………





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