想われたくて…‐姉と私とあの人と‐
あれから、神崎様は……


「僕も、精一杯考えてみますね。志保が家で待ってますので、今日はこれで失礼する事にしますね。」


そう言って、帰って行った。




あたしは、神崎様に出した、紅茶のカップを片付け終わると……


木下サンの元へ向かった。


ちゃんとお礼、言うべきだもんね。



「木下サン!」


木下サンは、デスクでパソコンに向かっていた。


「お?神崎様お帰りになったのか?」


真顔で言った木下サンは、前までとは、違う。


前ならココで、あの可愛い笑顔であたしの心を、キュッってさせてた……。


仕事には、支障させないつもりでも、やっぱり多少の変化はある。


あたしにも、あるんだろうな……


自分では、今まで通りにしてるつもりでも。



「はい、志保様を待たせてるみたいで……。あ、あのっ!……さっきはありがとうございました!あたし、全然気付かなくて……。」


あたしは、木下サンに話し掛けるだけで、焦るような喋り方になってしまう……。


やっぱ、ぎこちないよね……




すると……



木下サンは、フフッって笑った……


前の様に、あたしと目を合わす事は、せずに。


「最初はみんなそうだよ。だんだんお客様の気持ちを掴んで行けるようになるさ。

あ、でも……焦らなくていいからな?

逆効果になる場合もあるから。

ゆっくり成長してけな?」


「は……い。」


……やっぱり素敵な先輩。


あたし、本当にこの想い、消せる事できるの?







< 161 / 320 >

この作品をシェア

pagetop