想われたくて…‐姉と私とあの人と‐
「木村さん。」


「ハイ!」


急に喋った北川サンに、あたしは姿勢をシャキッっと正して、返事をした。


「お姉さんに話せば……わかってもらえるんじゃ無いかしら?」


普通……


そう思うよね……


「……はい。姉は、たぶん祝福してくれると思います。」


「じゃあどうして言わないの?」


「きっと……祝福する……フリをするから……。」


あたしは、目線を落として……


切なさをぐっと堪えた。


「優しいんです……。本当は、納得できないはずなのに……きっと作り笑顔を出すんです。」


「じゃあ、このまま木村さんが作り笑顔をし続けるの?」


……。


それくらい……


我慢できるもん。



「あたしは、平気です……。

あたしは……お姉ちゃんが泣いてる時に、自分が幸せなんて……それこそ辛いです!

お姉ちゃんが幸せにならない限り、あたしは幸せを感じない……。」


今の状態で、木下サンの隣に居れても、あたしは幸せじゃないよ……。


「いつか……姉に、お互い心から想い合える人ができたら……

その時は、自分の幸せ、考えます。」


「そっか……。

もう、決めたのね?」


「はい。」


「木下君は、納得してるの?」


「木下サンは……あたし達の過去を姉に聞いてるはずなので、その事もあるだろうし……。」


そう。


それからもう一つ


木下サンが、あたしと付き合いたいと、


一言も言わなかった理由。


それは、きっと……







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