想われたくて…‐姉と私とあの人と‐
木下サンの家は近くて、すぐに着いた。


タクシーの支払いを済ませ、降りた。



二階建ての、アパート。



一人暮らしだったんだ……

一人……


あたしの心配は、更に増す。


「木下サン!部屋、どこですか?」


あたしは、電柱に寄り掛かる木下サンの体を、再び支えた。


とにかく部屋まで連れて行かないと。



「わり……二階なんだ……ゴホッ……鍵、ポケット……」


ドキッ!


鍵……


今は、ドキドキしてる場合じゃ無いよね! 


「はい!木下サン、あたしに捕まって?」





あたし達は、階段を上がり、木下サンの部屋の前まで行った。


木下サンのポケットに手を入れると、すぐに金属の物に手が触れた。


それを取り出すと、車の鍵と部屋の鍵と思われる物がキーホルダーと一緒になっていた。


「鍵、開けますね。」


辛いのか、木下サンはあたしの言葉に答え無い。



――カチャリ。



鍵はスムーズに開いてくれた。


正直、部屋に上がるべきか、迷った。


少し抵抗がある……。


男の人の、一人暮らしの部屋に上がった事なんて、無かったから……。



でも……、


そんな場合でも無い。



あたしは、躊躇いを打ち消し、木下サンを支えたまま、部屋に入った……。






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