想われたくて…‐姉と私とあの人と‐
どれくらい抱き合って居たのか、わからない。


あたしは……夢中でしがみ付いてた。


お姉ちゃんの事を忘れて……



しばらくすると、木下サンが口を開いた。


「会社の近くで、安藤と飯食った帰りだったんだ。 そしたらお前、どっかの男に抱き締められてるし……

唖然としてたら……お前、嫌がって泣き出すから……

そっからは、無我夢中で……あんま覚えてねぇや。
気付いたら、お前の手、引っ張って歩いてた。」



何と言っていいかわからず……


あたしは、無言のままで居た。


「………たのかもな。」


え?


「あ、ごめんなさい、聞き取れ無か……」


突然、体を離された――






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