お願いだから
那智の唇は濡れてる。
私の唇で濡れたんだ…そう思ったらどうしようもなく愛しくて、
寸止めの状態まで唇を触れずに近づけてみる。
目をつぶって構えてた那智が目を開けて、私の目を見た。
潤んだ瞳が、もっと欲しいと訴えてきてるように、見つめてくる。
上から覆いかぶさりたい気持ちを押さえ、焦らしてみる。
『…もう一回、してほしいの…?』
そうわざと吐息交じりにゆっくりと訊くと、那智は恥じらいがちに目をそらした。
『那智から、して』
すると、戸惑いがちの白い手が私の頬に伸び、
那智が私の唇に吸い付いてくる。
私に覆いかぶさられ、那智は下から私の唇を啄んだ。