夜香花
「ん~……眩しい……。暑い……」

 呟いて転がり、深成はごしごしと目を擦った。
 小さな格子窓から、明るい日が差している。

---あ~……。何か、懐かしい夢見たなぁ---

 ぼんやりと転がったままで、深成は今見ていた夢を反芻した。

 呑気にごろごろしていた深成は、のそのそと起き上がって、周りを見渡した。
 少し向こうに、真砂を見つける。
 頭の下で両手を組み、真砂は目を閉じている。

---こいつも寝るんだぁ---

 当たり前なのだが、ちょっと新鮮に思い、深成はずるずると這って、真砂に近づいた。
 至近距離に近づいても、真砂は目を開けない。
 まじまじと、深成は真砂の寝顔を覗き込んだ。

---……あのとき千代が言ってた、一等好きな人ってのは、こいつのことなのかな---

 真砂に抱かれて、身も世もなく乱れていた千代を思い出し、深成は、じっと真砂を見た。
 確かに、綺麗な顔である。
 ただ寝ているところだけ見ると、いつも纏っている刺々しさもなく、触れれば斬られそうな空気もない。
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