夜香花
「ま、お前なんざ、その身体じゃまだまだだろうがな」

「し、知らないくせにっ」

 ようやく意味がわかり、深成はまた赤くなって己の身体を抱きながら、真砂を睨み付けた。

「見りゃわかる」

「みみみ、見りゃって……! あんた、いつわらわの身体を……」

 わなわな、と真っ赤になって言う深成に、真砂はにやりと邪悪な笑みを浮かべた。

「何を驚いてるんだ。俺の家で寝起きしておいて、何もないと思うのか」

「~~~~っっ!!」

 瞬間的に、深成は顔から火を噴かんばかりに真っ赤になった。
 合わせを握りしめた手が、ぶるぶると震えている。

「……冗談だ」

 あっさりと言うと、真砂はようやく、単を羽織った。
 と言っても、まだ前は全開なのだが。

 深成はしばらく赤い顔のまま、己の着物の合わせを握りしめて固まっていたが、再度ぎ、と真砂を睨むと、そろそろと火に近づいた。
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