夜香花
「お前は里で、じぃさんにどんなことを教わったんだ」

 女子であれば、まずは身体を使った女技を教わるはずだ。
 女子はやはり、戦闘では男に劣る。

 忍びは持てる技術を徹底的に磨き上げるものだ。
 戦闘では劣るが、女子は女子にしか使えない、強力な技が使える。

「実践は先だとしても、技としては昔から教わるもんだと思ってたがな」

 里の娘は、初物狩りで何が行われるか、そのときまで知らないわけではない。
 それまでに、予備知識は十分なはずだ。

「あ、あんたの党の女子は、皆そうだっての?」

「普通はそうじゃないのか? 女子の忍びの女技は、当たり前のことだろ」

 愕然と、深成は両手を地に付いた。
 そんなこと、思いもしなかった。

「し、忍びの女は、そういうことをするのが当たり前なの……。そんなこと……」

 嫌だーっ! と頭を抱えて悶絶する深成を、相変わらず冷めた目で見ていた真砂は、ふと漂う匂いに気がついた。
 火の中の塊が、煙を上げている。

「あっ!!」

 匂いに気づいた深成が叫び、慌てて傍の枯れ木で塊を取り出す。
 そして、ふぅふぅと息を吹きかけた。
 すっかり灰になった包みを、ぱんぱんと払うと、こんがりと焼けた芋が現れた。
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