夜香花
「違うみたい。どうも、刺客らしいわよ?」

「えっ」

「事あるごとに、頭領を狙ってるみたいだし」

 一瞬だけ、娘たちは固まった。
 が、すぐにまた手を動かしだす。

「でも頭領は強いもの。そう簡単に、やられるわけないわ」

「そうよねぇ。それに、羽月が頭領の護衛に付きたいって、しきりに言ってるみたいだし」

 え? と、皆の視線が娘の一人に集まる。

「羽月、前の指令のとき、下手打ったじゃない?」

「ああ……。捕まったんだってね?」

「羽月はとにかく、頭領に認められたくて必死だから、焦って失敗したらしいわ」

 前の指令とは、おそらく細川屋敷を襲ったときのことだ。
 そういえば、あのとき誰か曲者が捕まったとか言ってたような。

---真砂の仲間だったのか。でもあいつ、そんな素振りは全然見せなかったな。お方様を殺した後も、とっとと外に出たし。助けに行ってないんじゃないの?---

 何て奴だ、と、再び深成は拳を握る。
 真砂の行動は、深成には理解できないことばかりだ。
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