夜香花
 そのとき、ばさ、と羽音が聞こえた。
 清五郎が立ち上がり、窓の外の軒先にかけてある鳥籠を覗く。
 そこから今しがた帰ってきた鳥を出し、足に括り付けてあった紙を取った。

「早いな。よっぽど褒美が欲しいと見える」

 笑いながら、清五郎は紙を開いて真砂に渡した。
 紙に目を落とした真砂が、少し怪訝な表情になる。

「どうかしたのか?」

 再び座った清五郎に、紙を投げて寄越す。
 それを受け取り、清五郎も眉を顰めた。

「……舘内には、女のみ?」

「これでは千代は、働けんな」

「まぁ……やる気はなくなろうな」

 さして困った様子もなく、清五郎はぐるりと家の中を見た。
 真砂の家は、生活感がない。
 男の一人暮らしということを差っ引いても、殺風景なことこの上ない。

「帰ってきたら、しばらくここに置いてやればいいではないか。喜んで家事もしよう」

「何故だ、鬱陶しい。褒美が欲しけりゃ、夜だけ来ればよかろう。それもこれも、あいつが有力な情報を掴んでくればの話だがな」

 そう言って、真砂は外に出た。
 そこにはすでに、里の者たちが控えている。
 特に招集をかけなくても、真砂が帰ってきた時点で、皆集まるのだ。
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