夜香花
「だから、他人からの施し物など食うと、ろくな事がないんだ」

 ひっく、ひっくと身体を痙攣させている深成に言いながら、真砂は転がった器の周りにこぼれる粥を眺めた。
 粥といっても、米などはほとんどなく、ほぼキノコだ。

「毒殺に切り替えたってわけか。でも、こんなんじゃバレバレだぜ。野草や木の実なんぞ、乱破なら知り尽くしてる。何でお前は、そんなこともわからない?」

 深成の採ってきたキノコは、毒キノコだったのだ。

「だ、だって……ひっく、普通に襲ったんじゃ、敵わない……ひっく、敵わないもの。あんただって、ひっく、どうしたってお腹は空くでしょ。毒キノコのほうが、ひっく、簡単だって閃いたんだも……ひっく」

「……てめぇで食ってりゃ、世話ねぇな」

「うっ……ひっく、うえええぇぇぇぇん~~~」

 ひっく、ひっく、としゃっくりを繰り返しながら、深成は泣き出した。
 うるさい、と真砂の眉間に皺が寄る。

「あんたは強いから、ひっく、死ぬかもしれない恐怖なんて、わかんないんだぁ~~。毒飲んで落ち着いていられるなんて、ひっく、そんなの無理に決まってるんだから~ひっく」

 わぁんわぁんと盛大に泣き喚く。
 違う意味で、こいつは大物だな、と思いながら、真砂はため息をついた。
 目の前でこんなにぎゃあぎゃあ泣き喚かれたのも初めてだ。
 しかも、訳のわからない文句を垂れる。
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