夜香花
「黙れよ、うるせぇ」

「黙れるかぁっひっく、この馬鹿!」

「馬鹿はお前だ。そんな手に俺が引っかかるとでも思ってたのか」

「うるさぁい! うっひっく、わらわは、わらわなりに頭を使ってるんだぁ! うえっひぃいっく」

 泣き喚きながら、深成は傍にあった真砂の刀を掴んだ。
 ぶん、と振り回す。

「うも~っ、こうなったら、諸共じゃあっ! ひっく。殺してやるぅ~」

 ぶん、ぶん、と無茶苦茶に振り回される刀をひょいひょいと避けていた真砂は、ふと一つの気配を感じた。
 と、その瞬間、戸口から何かが飛び込んでくる。

「頭領っ」

 甲高い叫び声と共に、真砂の前に、一人の少年が立ちはだかる。
 そして素早く、深成の持つ刀に向かって、苦無を放った。

 深成は驚きながらも、咄嗟に飛んできた苦無を避ける。
 その動きに、真砂は少し目を見張った。

「頭領っ。ここはおいらに任せてくださいっ」

 はた、と目の前に立つ少年を見れば、今日一日、何か付きまとっていた羽月ではないか。
 頭領をお守りするため、お側に置いてください! と言いつつ、真砂が取り合わないのにもめげずに、付きまとっていたのだ。
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