夜香花
「何だお前。まだいたのか」

 鬱陶しそうに言う真砂に、羽月はちょっと気圧されたように、目を伏せた。
 が、すぐに顔を上げると、深成に向き直る。

「頭領、やっぱり狙われてるんじゃないですか。やはり、護衛に付かせていただきます!」

 そう叫び、羽月は腰に差していた刀を抜いた。
 ひく、と相変わらず喉を引き攣らせながら、深成は羽月を睨む。

 真砂は二人を見ながら、少し考えた。
 そして、壁際に下がると、どさ、と腰を下ろす。

「いいだろう。羽月、そんなに護衛に付きたいなら、まずそいつを倒してみな」

 え、と羽月だけでなく、深成も目を見開いて真砂を見た。

「こ、この卑怯者……っ」

 ぼろぼろと、また深成の目から涙がこぼれる。
 真砂は少し笑うと、ふんと鼻を鳴らした。

「そんだけ元気に動いておいて、まだわからんのか。あれには、そんな強い毒性はない。ま、しばらくは、ちょいときついかもしれんがな」

 また深成は、え、と呟いて、きょとんと真砂を見た。
< 134 / 544 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop