夜香花
第十章
 しばらく梁にしがみついていた深成は、ほっと息をついた。
 その途端、下から苦無が飛んでくる。

「うわっ……ぁぁあああ」

 ほっとした途端に攻撃されて、深成は、苦無は避けたものの、身体の均衡を失った。
 どさ、と真砂の前に落ちる。

「いったたた」

 地面に転がったまま呻き、深成は、じろりと真砂を睨む。

「いきなり何すんだよぅっ」

 むきーっとたんこぶを撫でながら噛み付く深成に、真砂は散らばった苦無を次々投げた。
 どすどすどすっと、深成の周りに苦無が突き刺さる。
 ひいぃぃっと、深成は慌ててぴょんぴょんと小さく飛び回って、苦無を避けた。

「ふ~む、お前、なかなか大したもんだな。その身体能力、並みじゃないぜ」

「もぉっ。危ないじゃないか! そんなもん投げられたら、誰だって死に物狂いで逃げるよっ」

 きゃんきゃんと言いながら、深成は真砂に近づいた。
 離れていたほうが危ないと判断したからだ。
 近づけば安全というわけでもないのだが。
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