夜香花
「どうって? あんたは、あの子がわらわを殺せると思ったから、けしかけたんじゃないの?」

 苦無を拾い集めながら、深成は言う。
 結構な数の苦無が手に入った。

 でも、と、深成は苦無の持ち手を握ったり摘んだりして、感触を確かめる。
 真砂の苦無よりも、しっくりこない。

「ねぇ。この苦無、あんたのみたいにしてよ」

 ずいっと出された苦無の山に、真砂は眉間に皺を刻んだ。

「これ、持ち手に何もしてないんだもん。このままじゃ使いにくい。滑るし」

 羽月の苦無は、特に何の加工もしていない。
 扱い始めて、間もないのだろうか。

「あんたの苦無、凄く使いやすいんだもん。そんな細い荒縄、どうやって作ったの」

「そういえば、お前はこれといった武器を持ってないな」

 ふと気づき、真砂は深成を見た。
 見る限りでは、深成は単なる子供だ。
 この子供が、あれほど俊敏に動くとは、誰が想像できるだろう。

「だって、お方様に仕えるのに、武器なんて必要ないじゃん」

「室を守るために、傍にいたわけではないってことか」

「お方様の周りには、優秀な武将がいたもの」
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