夜香花
「凄い!」

 何度見ても、自分に向かって飛んでくる苦無を素手で受け止めるというのは感心する。
 ぱちぱちと、深成は手を叩いて喜んだ。
 それがまるっきりの子供丸出しで、真砂の目は胡乱になる。

「ねぇねぇ。それ、どうやったら出来るようになるの」

 またわくわく、という風に、深成が身を乗り出す。

「お前は何で、これが出来るようになりたいんだ?」

 ふと真砂が、真剣な表情で言った。

「? だって、それ出来たら便利じゃん。受けた苦無で、すぐに攻撃も出来るし。あんたは何とも思ってないみたいだけど、それって凄いことだよ? 目の前でされたら、びっくりする。ということは、投げた相手の度肝を抜けるってことじゃないか。あ、一石二鳥だ。相手はびっくりする。自分は怪我もせずに、すぐに相手を攻撃できる。びびった相手を倒せたらなお良し」

 ぐ、と拳を握る深成に、真砂は、つい、と苦無の先を向けた。

「それだ」

 疑問符を顔一杯に浮かべて、深成が真砂を見る。
 真砂は、なおも苦無で深成を指しながら続けた。
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