夜香花
「苦無を受け止めることが出来ればどういうことに有利か、ちゃんとわかってる。お前は初め、俺が苦無を受け止めたとき、驚いていたな。ということは、こういう技を見たことがなかったってことだろ。見た技が、何に有効かすぐに理解するってことだ」

「……」

「そこまでわかるくせに、何故実際に役立てないのかねぇ」

 馬鹿にしたような物言いに、深成は、むきっと真砂に迫る。

「何が言いたいのさっ」

「どういう攻撃が効き目があるかとかもわかっている。なのに、さっきはあんな好機を、みすみす逃した」

「あの子を殺さなかったこと?」

 軽く頷く真砂に、深成は眉間に皺を刻んだ。

「あんたこそ、何でそんなこともわかんないの。あの子はあんたの仲間でしょ。それがわかってて、殺せるわけないじゃんっ」

 今度は真砂の顔に疑問符が浮かぶ。
 言っている意味がわからない、というように、深成を凝視した。
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