夜香花
「……あんたは頭領でしょ。頭領が仲間のことを考えないで、どうすんの」

「前にも言ったが、俺は頭領じゃない。皆が勝手に俺を頭領と思っているだけだ。俺は群れるのは好きじゃない。大体乱破のくせに、群れるほうがおかしい。単体で動いたほうが、よっぽど効率的じゃないか。いちいち人に意見を求めなければ動けないような奴はいらん」

 最早深成は、開いた口が塞がらない。
 何という冷淡さだ。

 が、真砂の言うことも一理あるのだ。
 大々的に表立って戦場(いくさば)に出ない乱破は、群れる必要はないはずだ。
 むしろ目立ってはいけないため、実際に動くときは、単独で動くのが基本である。

 党で結束しているところなら、実際に動くまでに綿密な作戦を党内で立て、仲間と協力して事に当たる。
 それはそれで、完全なる統制が成されていれば、効率的に動ける。

 が、人数が多ければ、軋轢が生まれるのも事実だ。
 大勢の党を完璧に統率するなど、よほどの力量がなければ出来ない。

 乱破は大抵、大きな仕事を秘密裏に行う。
 常人がこなすよりも、乱破の仕事は難しいのだ。
 加えて命に関わる仕事がほとんどなので、細心の注意が必要だ。
 ちょっとした党内の綻びが、仕事の失敗を招く。

 なら初めから、たった一人で事に当たったほうがいい。
 全てを一人で決め、実行する。
 だが現実には、そのようなことが出来るのは、それこそおいそれとは現れないほどの、相当な実力の持ち主だけなのだ。
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