夜香花
「真砂。また舘に行くのか」
「ああ」
頷いただけの真砂から、清五郎は真砂の考えを読み取る。
しばらく考え、清五郎は、ひゅいっと短く、空に向かって口笛を吹いた。
ちら、と真砂が振り返る。
口笛に応え、ざざ、と木の葉が揺れたかと思うと、木々の間から一人の少年が飛び降りてきた。
「捨吉(すてきち)。城下に行く者を、至急集めろ。あまり人数はいらん。人が集まるようだったら、大部分は周りを固めるに止めろ。頭領に従うのは、精鋭数人」
清五郎の言葉に頷き、捨吉は、ちらりと真砂を見た。
が、真砂と目が合うと、慌てたように顔を伏せる。
そして、そそくさと立ち上がると、ぺこりと頭を下げ、再び木の中に消えた。
「あいつは若い者の中では、一番しっかりしてるぜ。すぐに使える奴をまとめてくるだろ」
「どうでもいいさ」
清五郎の言葉を聞き流し、真砂はそのまま、城下に入った。
真砂は元々、乱破らしい格好はしていない。
普通の着流しに、刀を差している。
城下を歩いていても、単なる侍としか見られない。
真砂は昨日歩いた道を反対側から進み、最後に矢次郎の店に寄った。
「ああ」
頷いただけの真砂から、清五郎は真砂の考えを読み取る。
しばらく考え、清五郎は、ひゅいっと短く、空に向かって口笛を吹いた。
ちら、と真砂が振り返る。
口笛に応え、ざざ、と木の葉が揺れたかと思うと、木々の間から一人の少年が飛び降りてきた。
「捨吉(すてきち)。城下に行く者を、至急集めろ。あまり人数はいらん。人が集まるようだったら、大部分は周りを固めるに止めろ。頭領に従うのは、精鋭数人」
清五郎の言葉に頷き、捨吉は、ちらりと真砂を見た。
が、真砂と目が合うと、慌てたように顔を伏せる。
そして、そそくさと立ち上がると、ぺこりと頭を下げ、再び木の中に消えた。
「あいつは若い者の中では、一番しっかりしてるぜ。すぐに使える奴をまとめてくるだろ」
「どうでもいいさ」
清五郎の言葉を聞き流し、真砂はそのまま、城下に入った。
真砂は元々、乱破らしい格好はしていない。
普通の着流しに、刀を差している。
城下を歩いていても、単なる侍としか見られない。
真砂は昨日歩いた道を反対側から進み、最後に矢次郎の店に寄った。