夜香花
「十一? それほどに子供でありますか。ほんに、その者が刺客なのですか?」

「あんたの言う刺客が、どいつのことかはわからんが、少なくともそのガキは、俺の命を狙うために、ここまで来た」

 長老は黙り込んだ。
 真砂を狙う輩は多い。
 里に入るまでに大概殲滅されるが、前のように、実際に真砂に襲いかかることが出来るところまで入ってくる者もいるのだ。

「あきが言っていた刺客は、その子供のことですかのぅ」

 真砂は少し首を傾げた。
 ちょっと考え、ようやく『あき』というのが、先程抱いた娘だと気づく。

「娘らにも気づかれているのか。ったく、迂闊な奴だ。まぁ、あの間抜けっぷりからすると、さもありなん、という感じだが」

「……お話だけ聞いていると、全くさほどでもないように思えますが。そうではありますまい」

 長老が、長く伸びた顎髭をしごきながら言う。

「頭領からすれば、ほんのひよっこでも、他の者からしたら脅威、ということもあります故。むしろ、そちらのほうがあり得まする」

 真砂の能力は、並みではないのだ。
 真砂を基準に考えると、とんでもない目に遭う。
 だが、当の真砂はまた、ふんと鼻を鳴らした。
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