夜香花
真砂は黙って、茶を啜る長老を見た。
この長老は、真砂の育ての親であり、また師でもあるのだが、具体的に何を教わったわけでもない。
そもそも真砂は、五つぐらいまでは他の者と同様に、両親がいたのだ。
基本的なことは、その頃に教わった。
あとはその基本を、自分なりに磨いただけ。
元々一から十まで教えないと出来ないような者は、いらないのだ。
と考え、そういやそんなこと、前に清五郎に言われたな、と思い出す。
「ま、清五郎もそのようなこと、引き受けないでしょう。いい加減、己で努力しなければ」
若者の成長を見守るように、穏やかに言う長老は、再度茶を啜ると、ところで、と話を戻す。
「羽月は生きておるのに、刺客に負けたのですか?」
「ああ。俺には理解できんが、ガキは天井の梁に身を隠して、羽月をやり過ごした」
「頭上を狙える位置にいながら、攻撃しなかったということですか」
真砂は頷いた。
長老は顎髭をしごきながら少し考え、息をついて茶碗を置く。
「やはり、まだまだ未熟者。頭上にいる敵を見つけられないとは、致命的ですな」
「そうだな。まぁ、あのガキの妙な考えのお陰で、羽月は命拾いしたってことだ」
この長老は、真砂の育ての親であり、また師でもあるのだが、具体的に何を教わったわけでもない。
そもそも真砂は、五つぐらいまでは他の者と同様に、両親がいたのだ。
基本的なことは、その頃に教わった。
あとはその基本を、自分なりに磨いただけ。
元々一から十まで教えないと出来ないような者は、いらないのだ。
と考え、そういやそんなこと、前に清五郎に言われたな、と思い出す。
「ま、清五郎もそのようなこと、引き受けないでしょう。いい加減、己で努力しなければ」
若者の成長を見守るように、穏やかに言う長老は、再度茶を啜ると、ところで、と話を戻す。
「羽月は生きておるのに、刺客に負けたのですか?」
「ああ。俺には理解できんが、ガキは天井の梁に身を隠して、羽月をやり過ごした」
「頭上を狙える位置にいながら、攻撃しなかったということですか」
真砂は頷いた。
長老は顎髭をしごきながら少し考え、息をついて茶碗を置く。
「やはり、まだまだ未熟者。頭上にいる敵を見つけられないとは、致命的ですな」
「そうだな。まぁ、あのガキの妙な考えのお陰で、羽月は命拾いしたってことだ」