夜香花
「長老。赤目の、深成の党は、滅びたのではなかったのか?」

「深成の党?」

 不意に出た名前に、長老は首を傾げた。
 が、すぐに頷く。

 長老の知識は半端なものではない。
 中でもこの『中の長老』は、五人の長老の長だけに、あらゆることに精通していた。

「伊賀の乱で、伊賀者は散り散りになりましたが。その折に滅んだはず。ま、何人かは助かった者もいるかもしれませぬが、党を立て直すほどの人数は、残っておりますまい。元々小さな党じゃて」

「そのガキ、深成というんだが」

 真砂の言葉に、長老は黙って顎髭をしごいた。

「ということは、深成の党の、頭領ですか。その子供が『深成』を名乗っているのであれば、党自体も知れたものですな」

「そうだな。自分で、もう党は己一人しかいないと言っている」

 ふ~む、と長老は空(くう)を見る。

「その子供が生まれたのは、伊賀の乱の、相当後ですな。今十一ということは、伊賀の乱で落ち延びたのが、頭領の家系か。あそこは血筋で頭領を決める故、その子供が深成を名乗っているのであれば、まず間違いなく頭領の娘なのでしょう」

「あいつが物心ついたときは、すでにじいさんと二人だったようだが」
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