夜香花
「なるほど。伊賀者……。細川の屋敷に入り込んでいたのは、おそらく敵方の間者としてでしょうな。その子供が、というよりは、育てた者が、細川の敵方の誰かと通じていたのでしょう」
「敵、ということは、西軍か。てことは、あのとき屋敷を襲った西軍を手引きしたのもそいつか? ……いや」
確かすでに、深成は一人だったはずだ。
爺は死んだと言っていた。
ということは、今回の戦に、深成は直接関わってはいないのだろう。
「唯一の身内がいなくなって、行き場がなくなったから、細川屋敷に留まっていたのか」
「頭領」
ぶつぶつと考えを巡らす真砂に、不意に長老が声をかけた。
「その子供に、話を聞いてみたいのですが」
「ああ、そうだな。といっても、今頃はまた警戒心もなく熟睡してるだろうが」
家を出る前に見た深成の様子を思い出し、真砂はまた眉間に皺を刻んで言った。
が、長老は真砂が大袈裟に言っているのだと思ったようで、ひらひらと手を振る。
「またまた。いかな子供であっても、頭領の家で熟睡など、出来るわけありますまい。寝たふりをしているだけでしょう」
「……そう思うなら、見に来てみろ」
腰を上げる真砂に続き、長老もいそいそと座を立った。
「敵、ということは、西軍か。てことは、あのとき屋敷を襲った西軍を手引きしたのもそいつか? ……いや」
確かすでに、深成は一人だったはずだ。
爺は死んだと言っていた。
ということは、今回の戦に、深成は直接関わってはいないのだろう。
「唯一の身内がいなくなって、行き場がなくなったから、細川屋敷に留まっていたのか」
「頭領」
ぶつぶつと考えを巡らす真砂に、不意に長老が声をかけた。
「その子供に、話を聞いてみたいのですが」
「ああ、そうだな。といっても、今頃はまた警戒心もなく熟睡してるだろうが」
家を出る前に見た深成の様子を思い出し、真砂はまた眉間に皺を刻んで言った。
が、長老は真砂が大袈裟に言っているのだと思ったようで、ひらひらと手を振る。
「またまた。いかな子供であっても、頭領の家で熟睡など、出来るわけありますまい。寝たふりをしているだけでしょう」
「……そう思うなら、見に来てみろ」
腰を上げる真砂に続き、長老もいそいそと座を立った。