夜香花
「おや旦那。いらっしゃい」
矢次郎が茶を淹れ、真砂に渡した。
そのまま何気ない風を装いながら、状況を報告する。
「やはり、大した人の出入りもありませんね。多分屋敷内には、人自体がそういないんじゃないですか。女中もほんの一握り・・・・・・だからこそ、千代もあっさりと雇われたのでしょう」
「警戒している、ということか? 来訪者を警戒しているわりに、千代を新たに雇い入れるなど、迂闊としか言いようがないが。ま、あいつは役に立たんかったが」
「女子ですからな。男だったら雇われなかったでしょう」
それと、と、矢次郎は小さく畳んだ紙を差しだした。
「舘の出入り口と、内部の建物の詳細です」
「ほぅ」
茶を置き、真砂は紙を開いた。
屋敷の見取り図だ。
先に手に入れていたものより、大分細かく書き込まれている。
「今朝方、千代より届きました」
紙に書かれた内容を頭に叩き込み、真砂はちらりと、すぐ横にそびえる大木に目をやった。
いつの間にか、清五郎の姿がない。
おそらく木の上に身を隠しているのだ。
矢次郎が茶を淹れ、真砂に渡した。
そのまま何気ない風を装いながら、状況を報告する。
「やはり、大した人の出入りもありませんね。多分屋敷内には、人自体がそういないんじゃないですか。女中もほんの一握り・・・・・・だからこそ、千代もあっさりと雇われたのでしょう」
「警戒している、ということか? 来訪者を警戒しているわりに、千代を新たに雇い入れるなど、迂闊としか言いようがないが。ま、あいつは役に立たんかったが」
「女子ですからな。男だったら雇われなかったでしょう」
それと、と、矢次郎は小さく畳んだ紙を差しだした。
「舘の出入り口と、内部の建物の詳細です」
「ほぅ」
茶を置き、真砂は紙を開いた。
屋敷の見取り図だ。
先に手に入れていたものより、大分細かく書き込まれている。
「今朝方、千代より届きました」
紙に書かれた内容を頭に叩き込み、真砂はちらりと、すぐ横にそびえる大木に目をやった。
いつの間にか、清五郎の姿がない。
おそらく木の上に身を隠しているのだ。