夜香花
「な、何すんのさーっ!」

「このガキが! 何もわかってないくせに、知ったような口利くんじゃないよ!」

「知ってるもん~っ! 千代、最近清五郎にべったりだって聞いたし、さっきだって他の男の人としてたじゃんか」

 血走った目で掴みかかってくる千代から必死で逃げながら、深成が言う。
 それに、千代は今までよりも激しく反応した。
 いきなり加速し、深成の足に飛びつく。

「うわわっ」

 いきなり両足を拘束され、深成は体勢を崩して転がった。
 そこに、千代が馬乗りになる。

「ちょいと。それ、誰から聞いた? まさか真砂様じゃ……」

「ええ? な、何のことよ」

 ぐいぐいと顔を近づけて言う千代に気圧されながら、わたわたと深成が答える。
 千代の必死さは、先程の比ではない。

「あんたが話すことの出来る人なんて、真砂様ぐらいなもんだろう? まさかまさか、真砂様が、私が清五郎様にべったりだって言ったのかいっ?」

 物凄い勢いで問い詰める。
 慌てて深成は、ぶんぶんと首を振った。
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