夜香花
「お話は、頭領から大方聞きましたがなぁ、なるほど、先の動きといい、ちょっと並みの女子ではありませぬな。赤目の、深成の党の残党とか? お爺さまに育てられたようじゃが、その爺さまの名とか、誰かとやり取りしていたとか、何か覚えていることはありませぬかいのぅ」
長老の問いに、深成は首を傾げた。
しばし考え、ちらりと視線を上げる。
「何であんたたちは、わらわのことを、そんなに知りたがるのさ」
「わからんからだ。お前、細川屋敷でのことは、思い出したくないと言っていたな。でもそもそも、お前がここにいる目的は、室の仇討ちじゃなかったか? そんな良い思い出もない屋敷の主のために、己の命を捨ててまで仇討ちをしようと思うものか?」
「……」
「殿様や、たら姫のことは嫌いでも、室のことは慕っていたのかもしれんがな」
「……別に、お方様にも可愛がられたわけではない。そう大事にもされなかった。でもそれは、誰に対してもそうだったし」
「どういうことだ?」
深成は膝を抱え、小さく丸まりながら、ぽつぽつ話し出す。
「お方様は、あんまり人に興味がないというか。感情がないっていうのかなぁ。わらわがたら姫に苛められても、何もしてくれないし。だからといって、たら姫をことのほか可愛がるわけでもないんだよね。まぁ、たら姫は実の娘だから、たら姫が甘えていったら、相手はするんだけど。わらわなんかは、ほんとに放ったらかし」
長老の問いに、深成は首を傾げた。
しばし考え、ちらりと視線を上げる。
「何であんたたちは、わらわのことを、そんなに知りたがるのさ」
「わからんからだ。お前、細川屋敷でのことは、思い出したくないと言っていたな。でもそもそも、お前がここにいる目的は、室の仇討ちじゃなかったか? そんな良い思い出もない屋敷の主のために、己の命を捨ててまで仇討ちをしようと思うものか?」
「……」
「殿様や、たら姫のことは嫌いでも、室のことは慕っていたのかもしれんがな」
「……別に、お方様にも可愛がられたわけではない。そう大事にもされなかった。でもそれは、誰に対してもそうだったし」
「どういうことだ?」
深成は膝を抱え、小さく丸まりながら、ぽつぽつ話し出す。
「お方様は、あんまり人に興味がないというか。感情がないっていうのかなぁ。わらわがたら姫に苛められても、何もしてくれないし。だからといって、たら姫をことのほか可愛がるわけでもないんだよね。まぁ、たら姫は実の娘だから、たら姫が甘えていったら、相手はするんだけど。わらわなんかは、ほんとに放ったらかし」