夜香花
第十四章
次の日、深成は真砂と共に、長老の家に赴いた。
「よぅ来られましたなぁ。とりあえず、ここではちぃっと具合が悪い故、河原まで出かけましょうかいのぅ」
昨夜と変わらず穏やかに、長老は二人が入ってくるなり腰を上げた。
深成はきょとんとしたが、真砂は特に異を唱えることなく、先に立って屋敷を出る。
「何でわざわざ出かけるの?」
真砂について屋敷を出ながら、深成は長老に問うた。
「わしの家では、いつ誰が来るやら、わかりませぬでのぅ。ま、頭領がおられれば、大抵の者は引き下がりまするが」
「内緒の話なの?」
「内緒というわけではありませぬが、お前様の存在自体、あまり大っぴらにしないほうが良いのでは? お前様のためにも」
「わらわのため? えっと、あんまりわらわが有名になったら、真砂を殺しにくくなるから?」
首を捻る深成に、前を歩いていた真砂が渋い顔で振り返った。
「馬鹿か。誰もお前が俺を殺せるなどとは思ってない。部外者であるお前が、皆に狙われるからだ」
「……あんたはもう~。阿呆とか馬鹿とか、ほんっとに憎たらしいんだからっ」
真砂を睨んで言う深成だったが、ふと表情を和らげると、ててて、と真砂の傍に走り寄った。
下から見上げ、にやりと笑う。
「何だかんだ言って、あんたもわらわを心配してるんじゃん。わらわを守るためってことでしょ?」
「よぅ来られましたなぁ。とりあえず、ここではちぃっと具合が悪い故、河原まで出かけましょうかいのぅ」
昨夜と変わらず穏やかに、長老は二人が入ってくるなり腰を上げた。
深成はきょとんとしたが、真砂は特に異を唱えることなく、先に立って屋敷を出る。
「何でわざわざ出かけるの?」
真砂について屋敷を出ながら、深成は長老に問うた。
「わしの家では、いつ誰が来るやら、わかりませぬでのぅ。ま、頭領がおられれば、大抵の者は引き下がりまするが」
「内緒の話なの?」
「内緒というわけではありませぬが、お前様の存在自体、あまり大っぴらにしないほうが良いのでは? お前様のためにも」
「わらわのため? えっと、あんまりわらわが有名になったら、真砂を殺しにくくなるから?」
首を捻る深成に、前を歩いていた真砂が渋い顔で振り返った。
「馬鹿か。誰もお前が俺を殺せるなどとは思ってない。部外者であるお前が、皆に狙われるからだ」
「……あんたはもう~。阿呆とか馬鹿とか、ほんっとに憎たらしいんだからっ」
真砂を睨んで言う深成だったが、ふと表情を和らげると、ててて、と真砂の傍に走り寄った。
下から見上げ、にやりと笑う。
「何だかんだ言って、あんたもわらわを心配してるんじゃん。わらわを守るためってことでしょ?」