夜香花
「爺様には、具体的にはどういったことを学ばれましたのじゃ? 忍びの術を、教えられましたのかな?」

 長老の言葉に、深成は、う~むと考える。

「忍びの術ってわけでもなかったような。一番力を入れてたのは、息を整える方法。ていうか、それ以外は教わってないような」

 長老も真砂も黙っている。
 清五郎が、納得しかねる顔で深成を睨んだ。

「何も教わらないで、お前のようなガキが、おいそれと真砂に近づけるものか。他にも何か、徹底的に教わったはずだ。言えないということは、お前、どっかの間諜か?」

「違うもんっ。ほんとにわらわが爺から、それこそ徹底的に教わったのは、息に関することだけだもんっ」

「縄抜けも教わったとか、言ってなかったか?」

 口を挟んだ真砂に、深成は、ああ、と手を叩く。

「でも、それはついでというか。体術とかも教わったことは教わったけど、遊びの一環ぐらいでしか習わなかった」

「お前のその、獣じみた勘の良さは、天性のものということか」

 呟いた真砂に、深成は微妙な顔になった。

「褒められてるのか、けなされてるのか」
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