夜香花
「忍びの党の、残党でしょう? あの焼き討ちで滅びたってんなら、すでにそれなりの者だと思ってました」

「そうだな。多分こいつは、直接乱には遭ってない。こいつを育てたっていう爺が、落ち延びた者の誰かだろう」

「あ……なるほど」

 それには納得し、捨吉は、ぽん、と手を叩いた。

「そうそう、それなら、ますますこの情報をお耳に入れるべきかと」

 少し興奮気味に、ずいずいっと捨吉は真砂ににじり寄る。

「里から出た者と、あの細川屋敷と、あと細川縁者よりも、西軍のほうを調べてみたんです」

「ほぉ。よくそこまで考えついたな」

 真砂の相槌に、ぱ、と捨吉の顔が明るくなる。
 勢い込んで、捨吉は話を続けた。

「前の指令に関することだとは思ってましたから、あのような戦の起こりそうな城主の屋敷にいる忍びということは、敵方の可能性のほうが高いじゃないですか。で、西軍を洗っているとですね、『深成』とまではわかりませんでしたけど、確かに赤目のほう出身の者が出入りしていたらしいんです」

 真砂は黙っている。
 が、特に話を打ち切らないということは、内容に興味がある証拠だ。

 捨吉は、清五郎に師事している。
 真砂の特徴も、清五郎から学んでいるのだろう。
 黙る真砂に心が折れることもなく、捨吉は懸命に説明を続けた。
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