夜香花
「んと、あ、あれっ。ないっ!」
慌てたように、深成がその辺りを這い回る。
真砂が渋面になった。
「お前なぁ。大事な宝だろ。それでなくても唯一の武器のくせに。こういうときこそ、まず懐剣を手にするもんじゃないのか」
敵の中心に落ちたって、武器さえ持っていれば何とかなるかもしれない。
なのに深成は、とにかく姿を隠すのに必死で、懐剣を掴まなかったようだ。
落ちる危険がある以上、攻撃態勢を取るのは当たり前のことなのに、とにかく守り一方の深成が、真砂には信じられない。
「だって! ちょっとでも動いたら、やばそうだったんだもんっ! 変に懐剣に拘るよりも、とにかくじっとしておくのが得策だと思ったんだもんっ」
きゃんきゃんと噛み付き、さらにじとっと真砂を睨む。
「あんたは変に強いから、弱い者のことなんて、わかんないんだよっ」
「おいこらガキ。さっきから何なんだ。頭領に対して、失礼な態度取りやがって」
我慢出来なくなったように、捨吉が深成の襟首を掴んで言った。
真砂のほうに身を乗り出していた深成は、後ろから引っ張られて、ぐえっとなる。
「何さ、わらわは真砂の配下じゃないもんっ。むしろ敵なんだから、どんな態度で接しようと勝手でしょっ!」
「何てことを! お前、今何を口走ったかわかってるか? 頭領を呼び捨てにするな!」
「それこそ、わらわには関係ないじゃんよーっ! 何さみんなみんな。頭領頭領って!」
慌てたように、深成がその辺りを這い回る。
真砂が渋面になった。
「お前なぁ。大事な宝だろ。それでなくても唯一の武器のくせに。こういうときこそ、まず懐剣を手にするもんじゃないのか」
敵の中心に落ちたって、武器さえ持っていれば何とかなるかもしれない。
なのに深成は、とにかく姿を隠すのに必死で、懐剣を掴まなかったようだ。
落ちる危険がある以上、攻撃態勢を取るのは当たり前のことなのに、とにかく守り一方の深成が、真砂には信じられない。
「だって! ちょっとでも動いたら、やばそうだったんだもんっ! 変に懐剣に拘るよりも、とにかくじっとしておくのが得策だと思ったんだもんっ」
きゃんきゃんと噛み付き、さらにじとっと真砂を睨む。
「あんたは変に強いから、弱い者のことなんて、わかんないんだよっ」
「おいこらガキ。さっきから何なんだ。頭領に対して、失礼な態度取りやがって」
我慢出来なくなったように、捨吉が深成の襟首を掴んで言った。
真砂のほうに身を乗り出していた深成は、後ろから引っ張られて、ぐえっとなる。
「何さ、わらわは真砂の配下じゃないもんっ。むしろ敵なんだから、どんな態度で接しようと勝手でしょっ!」
「何てことを! お前、今何を口走ったかわかってるか? 頭領を呼び捨てにするな!」
「それこそ、わらわには関係ないじゃんよーっ! 何さみんなみんな。頭領頭領って!」