夜香花
「真砂様」
嬉しそうに腕に取り付く千代を邪険に払い、真砂は、す、と物陰に身を滑り込ませた。
は、と千代も、辺りを見回す。
真砂に会えた喜びが勝って、周りの注意を怠っていた。
とりあえず誰もいないことを確かめると、千代は、改めて真砂の近くへ身を寄せた。
「真砂様。わたくしの情報、役に立ちましたでしょ?」
密やかに、千代が言う。
そして、壁に引っ付いている真砂へと、しなだれかかった。
「ご褒美をくださりませ」
膝を真砂の足の間に割り込ませながら、千代は真砂の頬に唇を寄せた。
しばらく女ばかりの舘に放り込まれて、相当飢えていたらしい。
ぐいぐいと、全身で真砂を誘惑する。
「……四つ頃、北のほうが騒がしかったな。どいつか、掴まったのか?」
胸を押しつけてくる千代をそのままに、真砂は問うた。
真砂の首筋に舌を這わせながら、千代は、ああ、と応じる。
「真砂様かと思って、肝を冷やしましたわ。羽月(はづき)ですわね、捕らえられたのは」
羽月は、捨吉が連れてきた者の中では、最年少だ。
小さい分、すばしっこく身も軽い。
だが何分、まだ何事も経験不足だ。
結果を焦るきらいもある。
嬉しそうに腕に取り付く千代を邪険に払い、真砂は、す、と物陰に身を滑り込ませた。
は、と千代も、辺りを見回す。
真砂に会えた喜びが勝って、周りの注意を怠っていた。
とりあえず誰もいないことを確かめると、千代は、改めて真砂の近くへ身を寄せた。
「真砂様。わたくしの情報、役に立ちましたでしょ?」
密やかに、千代が言う。
そして、壁に引っ付いている真砂へと、しなだれかかった。
「ご褒美をくださりませ」
膝を真砂の足の間に割り込ませながら、千代は真砂の頬に唇を寄せた。
しばらく女ばかりの舘に放り込まれて、相当飢えていたらしい。
ぐいぐいと、全身で真砂を誘惑する。
「……四つ頃、北のほうが騒がしかったな。どいつか、掴まったのか?」
胸を押しつけてくる千代をそのままに、真砂は問うた。
真砂の首筋に舌を這わせながら、千代は、ああ、と応じる。
「真砂様かと思って、肝を冷やしましたわ。羽月(はづき)ですわね、捕らえられたのは」
羽月は、捨吉が連れてきた者の中では、最年少だ。
小さい分、すばしっこく身も軽い。
だが何分、まだ何事も経験不足だ。
結果を焦るきらいもある。