夜香花
少々呆れ気味に、がっつく深成を見ていた捨吉だが、その右手はしっかりと、腰の竹筒を掴んでいる。
図らずも深成が毒味役になってしまったが、もし深成が苦しみだしたら、即水を飲ませて応急処置ができるように身構えていたのだ。
幸いにして、深成が苦しみ出すようなことはなさそうだ。
安心すると、途端に空腹を覚え、捨吉も男に頭を下げて、器に口を付けた。
「おっちゃん。おっちゃんは、元々ここに家があるって知ってたの?」
ひとしきり猪鍋を食った後で、深成が口を開いた。
男が少し訝しそうな目で深成を見る。
「何故だい?」
「だって、戦から逃げる途中で、ここに辿り着いても、そのときはここも、戦の後みたいだったんでしょ? 逃げてきたのに、わざわざ戦があったってわかるところに、腰を据えるかなぁ」
男がじっと深成を見た。
見かけの幼さからは、考えられない程しっかりとした考え方だ。
捨吉は、少しはらはらしながら二人を見た。
「おっちゃんはもしかして、元々ここに住んでたの?」
え、と捨吉は、顔を上げて深成を見た。
もしかして、この男に見覚えがあるのだろうか。
「嬢ちゃん。小さいのに、変に鋭いところを突くな」
男が顎を撫でながら、ゆったりと言った。
「そうかな? わら……あたしだったら、折角戦場から逃げてきたのに、また戦があったってわかるところに住もうなんて、思わないもん。怖いじゃん」
「そうか、それもそうだな」
図らずも深成が毒味役になってしまったが、もし深成が苦しみだしたら、即水を飲ませて応急処置ができるように身構えていたのだ。
幸いにして、深成が苦しみ出すようなことはなさそうだ。
安心すると、途端に空腹を覚え、捨吉も男に頭を下げて、器に口を付けた。
「おっちゃん。おっちゃんは、元々ここに家があるって知ってたの?」
ひとしきり猪鍋を食った後で、深成が口を開いた。
男が少し訝しそうな目で深成を見る。
「何故だい?」
「だって、戦から逃げる途中で、ここに辿り着いても、そのときはここも、戦の後みたいだったんでしょ? 逃げてきたのに、わざわざ戦があったってわかるところに、腰を据えるかなぁ」
男がじっと深成を見た。
見かけの幼さからは、考えられない程しっかりとした考え方だ。
捨吉は、少しはらはらしながら二人を見た。
「おっちゃんはもしかして、元々ここに住んでたの?」
え、と捨吉は、顔を上げて深成を見た。
もしかして、この男に見覚えがあるのだろうか。
「嬢ちゃん。小さいのに、変に鋭いところを突くな」
男が顎を撫でながら、ゆったりと言った。
「そうかな? わら……あたしだったら、折角戦場から逃げてきたのに、また戦があったってわかるところに住もうなんて、思わないもん。怖いじゃん」
「そうか、それもそうだな」