夜香花
「はは。ありがとうよ。そうさな、そうしたいのは山々だが、お前さんが思うほど、戦ってのは生易しくねぇ。伏見の屋敷も、どれだけ残ってるか……。それに、わしがここで言伝(ことづて)を頼んだって、お前さんにゃその屋敷がどこにあるのか、わからねぇだろう」
「それは、そうだけど」
駄目か、と少し落胆した捨吉だったが、役に立てなくてがっかりしたのかと勘違いした男が、慰めるように、手荒く捨吉の頭を撫でて、顔を近づけた。
「ま、わしも山に籠もって長い。もしかしたら、伏見から戦の火は遠ざかっているかもな。わかればでいいが、大谷屋敷の様子が知りたいもんだ。五助様がご無事だったら、わしがここにいること、お伝えしておいておくれ」
「大谷屋敷の五助さんだね。きっと伝えるよ」
大きな手がかりを掴んで、捨吉は嬉しそうに大きく頷いた。
男はそんな捨吉の心には気づかず、ちょっと真剣な顔で念を押した。
「でも、無理すんじゃねぇぞ。わしの言伝なんざ、大した用事じゃねぇ。周りの状況を見て、危険だと思ったら、こんな用事は忘れちまいな」
再度こくりと頷くと、捨吉は深成を促して、赤目の里を後にした。
「それは、そうだけど」
駄目か、と少し落胆した捨吉だったが、役に立てなくてがっかりしたのかと勘違いした男が、慰めるように、手荒く捨吉の頭を撫でて、顔を近づけた。
「ま、わしも山に籠もって長い。もしかしたら、伏見から戦の火は遠ざかっているかもな。わかればでいいが、大谷屋敷の様子が知りたいもんだ。五助様がご無事だったら、わしがここにいること、お伝えしておいておくれ」
「大谷屋敷の五助さんだね。きっと伝えるよ」
大きな手がかりを掴んで、捨吉は嬉しそうに大きく頷いた。
男はそんな捨吉の心には気づかず、ちょっと真剣な顔で念を押した。
「でも、無理すんじゃねぇぞ。わしの言伝なんざ、大した用事じゃねぇ。周りの状況を見て、危険だと思ったら、こんな用事は忘れちまいな」
再度こくりと頷くと、捨吉は深成を促して、赤目の里を後にした。