夜香花
第十九章
夕刻、里の手前の山の中で、二人は真砂と落ち合った。
「ふむ……。それなりの成果はあったということだな」
小さな焚き火を囲んで、捨吉の報告を聞いた真砂が呟いた。
深成の言う『感覚が覚える』ということにも、真砂は特に驚かなかった。
深成が言っていたように、信じていない風ではない。
真砂は深成の能力を、正確に把握しているのだ。
深成が『信じてくれない』と言ったのも、最初は信じないというより、信じられなかったのだ。
が、ここ数日深成を見てきて、この子供が単なる阿呆な子供でないことを知ったのだろう。
「それで、頭領。赤目の里で会った男が、大谷の殿様の家来に仕えていたらしいんですが」
あの男のことなど、どうでもいいかな、と思ったが、とりあえず頼まれた言伝のこともあるし、伏見に行った真砂であれば、大谷屋敷がどんな風だったかもわかるだろう。
一応報告しておこうと、口を開いた捨吉に、深成が目を向けた。
「そういえばさ、あのおっちゃん、『ごすけ』って言ったよね」
「ん? ああ……。主人の名前か」
何の気なしに頷いた捨吉に、真砂が反応した。
「『ごすけ』だと?」
「はい。俺たちが伏見に抜けるって言ったら、大谷屋敷の様子を見て、可能であれば、五助様って人に伝えてくれって」
「大谷の家臣の五助か」
「槍使いだったようです。殿様の側近だったって」
意外な真砂の食い付きように、若干訝しく思いながらも、捨吉は己の知ること全てを打ち明ける。
不思議に思っても、真砂が反応する以上、意味はあるのだ。
「ふむ……。それなりの成果はあったということだな」
小さな焚き火を囲んで、捨吉の報告を聞いた真砂が呟いた。
深成の言う『感覚が覚える』ということにも、真砂は特に驚かなかった。
深成が言っていたように、信じていない風ではない。
真砂は深成の能力を、正確に把握しているのだ。
深成が『信じてくれない』と言ったのも、最初は信じないというより、信じられなかったのだ。
が、ここ数日深成を見てきて、この子供が単なる阿呆な子供でないことを知ったのだろう。
「それで、頭領。赤目の里で会った男が、大谷の殿様の家来に仕えていたらしいんですが」
あの男のことなど、どうでもいいかな、と思ったが、とりあえず頼まれた言伝のこともあるし、伏見に行った真砂であれば、大谷屋敷がどんな風だったかもわかるだろう。
一応報告しておこうと、口を開いた捨吉に、深成が目を向けた。
「そういえばさ、あのおっちゃん、『ごすけ』って言ったよね」
「ん? ああ……。主人の名前か」
何の気なしに頷いた捨吉に、真砂が反応した。
「『ごすけ』だと?」
「はい。俺たちが伏見に抜けるって言ったら、大谷屋敷の様子を見て、可能であれば、五助様って人に伝えてくれって」
「大谷の家臣の五助か」
「槍使いだったようです。殿様の側近だったって」
意外な真砂の食い付きように、若干訝しく思いながらも、捨吉は己の知ること全てを打ち明ける。
不思議に思っても、真砂が反応する以上、意味はあるのだ。