夜香花
「となると、湯浅五助の上役は、大谷の殿様だ。そうだな、それも、さっきはっきりした」
言いながら、真砂は己の膝頭にある絵を、とんとんと叩いた。
「対(つが)い蝶だな。大谷の家紋だ」
「珍しいですね」
蝶紋自体が、あまりない。
一羽だけのものなら信長などで知られているが、対い蝶などあまりないのだ。
「ま、あそこの殿様自体、出生が謎だしな。でもなぁ」
真砂は蝶の上の、自分が描いた丸をなぞった。
「これも家紋だとすると、ちょっとややこしいお荷物を抱えたかもしれん」
真砂の言葉に、じ、と絵を見ていた捨吉が、はっとしたように顔を上げた。
丸が六つの、この紋は……。
「六文銭……」
軽く、真砂が頷く。
そして、すぐ横で眠る深成を見た。
「……えらい種を抱え込んだもんだ」
この紋で、全てがわかった。
おそらく深成自身も知らないのだろう。
大谷の対い蝶と、真田の六文銭がついている懐剣を、深成が持っているということ。
深成を育てたのが、大谷の家臣の湯浅五助ということ。
それだけで、深成が何者かがわかる。
「どうするかな……」
真砂は呟いて、目の前の小さな火を眺めた。
言いながら、真砂は己の膝頭にある絵を、とんとんと叩いた。
「対(つが)い蝶だな。大谷の家紋だ」
「珍しいですね」
蝶紋自体が、あまりない。
一羽だけのものなら信長などで知られているが、対い蝶などあまりないのだ。
「ま、あそこの殿様自体、出生が謎だしな。でもなぁ」
真砂は蝶の上の、自分が描いた丸をなぞった。
「これも家紋だとすると、ちょっとややこしいお荷物を抱えたかもしれん」
真砂の言葉に、じ、と絵を見ていた捨吉が、はっとしたように顔を上げた。
丸が六つの、この紋は……。
「六文銭……」
軽く、真砂が頷く。
そして、すぐ横で眠る深成を見た。
「……えらい種を抱え込んだもんだ」
この紋で、全てがわかった。
おそらく深成自身も知らないのだろう。
大谷の対い蝶と、真田の六文銭がついている懐剣を、深成が持っているということ。
深成を育てたのが、大谷の家臣の湯浅五助ということ。
それだけで、深成が何者かがわかる。
「どうするかな……」
真砂は呟いて、目の前の小さな火を眺めた。