夜香花
第二十章
城下から帰ってきてから、何となく真砂がよそよそしい。
今までも、特に仲良しだったわけではないし、よく考えてみれば、別段態度に変化はないのだ。
だが肌で感じる空気が、微妙に変わったというのだろうか。
何かが違う、と感じるのだ。
今日もそれを感じ、とうとう深成は、すっくと立ち上がると、いつもの定位置で刀の手入れをする真砂の前に移動し、すとん、と目の前に座った。
「ねぇ。どうしたっていうのさ」
真砂が、ちらりと深成を見る。
が、すぐに視線は刃に戻って、手入れの継続に入ってしまう。
「どうしたって聞いてんの! 無視してんじゃないよ」
ばんばんと遠慮なく真砂の膝頭を叩く。
やっと真砂が、刀を下ろして深成を見た。
が。
「どうもせん」
一言で打ち切られてしまう。
深成は一瞬思いきり唇をへの字に曲げると、また真砂の膝を、ばし、と叩いた。
「嘘つくんじゃないよっ! わらわがあんたの変化に気づかないとでも思ってんのっ」
まるで恋人のような物言いだが、それ以外に上手く言い表せない。
どこがどう、と聞かれても、わからないのだが。
「俺は別に変わってない」
さらっと言い、真砂は再び刀を持ち上げた。
だがその手を、深成がぐい、と押さえつける。
今までも、特に仲良しだったわけではないし、よく考えてみれば、別段態度に変化はないのだ。
だが肌で感じる空気が、微妙に変わったというのだろうか。
何かが違う、と感じるのだ。
今日もそれを感じ、とうとう深成は、すっくと立ち上がると、いつもの定位置で刀の手入れをする真砂の前に移動し、すとん、と目の前に座った。
「ねぇ。どうしたっていうのさ」
真砂が、ちらりと深成を見る。
が、すぐに視線は刃に戻って、手入れの継続に入ってしまう。
「どうしたって聞いてんの! 無視してんじゃないよ」
ばんばんと遠慮なく真砂の膝頭を叩く。
やっと真砂が、刀を下ろして深成を見た。
が。
「どうもせん」
一言で打ち切られてしまう。
深成は一瞬思いきり唇をへの字に曲げると、また真砂の膝を、ばし、と叩いた。
「嘘つくんじゃないよっ! わらわがあんたの変化に気づかないとでも思ってんのっ」
まるで恋人のような物言いだが、それ以外に上手く言い表せない。
どこがどう、と聞かれても、わからないのだが。
「俺は別に変わってない」
さらっと言い、真砂は再び刀を持ち上げた。
だがその手を、深成がぐい、と押さえつける。