夜香花
 里の者でない深成が、夜にうろうろするのは危険だ。
 ここに来て結構経つが、まだ深成の存在は、あまり知られていない。

 真砂のところにいる、ということを知らない者もいるだろう。
 そのような者に見つかれば、たちまち排除されてしまう。

 気持ちだけ焦っているうちに、真砂は千代を押し倒した。
 そのまま千代の帯を解き、着物を開く。
 堪らなくなり、深成は梁の上から叫んだ。

「ちょっと! 何やってんだよぅっ! あんたら、わらわの存在忘れてるんじゃないのっ」

 真砂が、ちらりと上を向いた。
 が、ふん、と鼻を鳴らすと、そのまま行為を続ける。

 千代までが、深成を見上げながら、馬鹿にしたように笑みを浮かべた。
 そして嬉しそうに、真砂の頭を胸に抱きしめる。

「~~~っ」

 梁の上で、深成は妙な汗をだらだらと流しながら、その光景を凝視した。
 見たいわけではないが、あまりの衝撃に、視線が外せない。
 二人は深成が見ているのがわかっていて、そのまま行為を続けているのだ。

 真砂が千代の足を大きく広げ、千代が淫らな声を上げるに至って、深成は目眩を覚えながらも、梁を蹴った。
 もつれ合う二人の横に飛び降りる。

 ちらりと真砂が視線を動かしたが、そんなことには気づかずに、深成はそのまま、外に駆け出していった。
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