夜香花
「御影と結ばれ、頭領が産まれ、頭領が五つほどになったときに、草は任務の仕上げにかかったのじゃ。里の詳細な位置、内部の者の情報、長年に渡って知り得たこと全て、余すところなく外に伝えた。織田に取り入りたい武将にの」
「……真砂のお母さんが?」
静かに、長老が頷く。
深成はただ、闇の中で固まった。
「お陰で我らは、仲間を多数殺された。この里に、わしより少し若い、壮年の者がおらぬのに気づいておったか? 皆、その戦で死んだのじゃ。今はようやっと、当時幼子じゃった頭領たちが大きくなり、党を支えておるが」
「そんな……。真砂は……裏切り者の子供なの?」
言葉にすると、余計に信じられない。
そんな者が、頭領として立てるのか。
真砂が頭領の座を厭うのは、そういうわけがあるからか?
「でも。皆は真砂を頭領だと認めてるんでしょ? 真砂が負い目を感じてても、裏切られた党の人たちが許してるんだったら、問題ないじゃん」
そういう過去があるから、あそこまで里の者に心を開かないのか。
そう考えれば、納得できる。
だが長老は首を振り、また、静かに口を開く。
「確かに頭領は、言ってしまえば裏切り者の、草の息子じゃ。じゃが頭領自体が裏切り者なわけではない。御影だって、妻と一緒になって党を裏切ろうとしたわけではない。我ら乱破は、その辺りはしっかりと認識している。それにの、初めに言うたじゃろ。草は元から、敵として入り込むのじゃ。裏切ったわけではない」
「……真砂のお母さんが?」
静かに、長老が頷く。
深成はただ、闇の中で固まった。
「お陰で我らは、仲間を多数殺された。この里に、わしより少し若い、壮年の者がおらぬのに気づいておったか? 皆、その戦で死んだのじゃ。今はようやっと、当時幼子じゃった頭領たちが大きくなり、党を支えておるが」
「そんな……。真砂は……裏切り者の子供なの?」
言葉にすると、余計に信じられない。
そんな者が、頭領として立てるのか。
真砂が頭領の座を厭うのは、そういうわけがあるからか?
「でも。皆は真砂を頭領だと認めてるんでしょ? 真砂が負い目を感じてても、裏切られた党の人たちが許してるんだったら、問題ないじゃん」
そういう過去があるから、あそこまで里の者に心を開かないのか。
そう考えれば、納得できる。
だが長老は首を振り、また、静かに口を開く。
「確かに頭領は、言ってしまえば裏切り者の、草の息子じゃ。じゃが頭領自体が裏切り者なわけではない。御影だって、妻と一緒になって党を裏切ろうとしたわけではない。我ら乱破は、その辺りはしっかりと認識している。それにの、初めに言うたじゃろ。草は元から、敵として入り込むのじゃ。裏切ったわけではない」